2025年4月22日、だいにぐるーぷはチャンネル開設8周年を迎える。中学生の同級生で始めた“放課後の延長戦”は、今や100万人以上の視聴者を抱え、YouTube界において自分たちのブランドを確立するまでに至った。
ただ、彼らの航海も、決して順風満帆だったわけではない。2018年夏に『1週間心霊スポット生活』で頭角を現しただいにぐるーぷだが、YouTube界の金字塔であるチャンネル登録者100万人を達成するまでには、4年以上の歳月を要した。それでも、彼らは自分たちが切った舵が正しいと信じ続け、それを証明したのだ。
そうして訪れた8回目の記念日に、だいにぐるーぷをここまで押し上げた“編集力"に大きく寄与してきた、土井谷誠一と飯野太一にインタビューを敢行。現在は、「オフラインと呼ばれる、動画の流れを作る部分がメイン」の土井谷と、「音効とか、オンラインと呼ばれる最後の仕上げがメイン」の飯野が、これまでのメイン企画を振り返ってくれた。
同級生と作った、最高の“ホームビデオ”
2018年夏に投稿された『1週間心霊スポット生活 西尾編』で、一躍時のグループとなっただいにぐるーぷ。登録者数は2千人から5万人近くまでに急増すると、その後に行われた『1週間シリーズ』でも破竹の勢いは止まらず、2020年春の『樹海の不思議な村で1週間生活してみた』の時点で、68万人とスターダムを駆け上がっていた。
-後にだいにの代表作となる『1週間シリーズ』の第1弾が投稿されましたが、当時はどのような編集体制でしたか?
土井谷: めちゃくちゃ忘れられているんすけど、元々心霊は毎日投稿で、それも西尾がツイキャスで毎回生配信して、その翌日に前日の話が上がっていくという流れでした。
土井谷:だから、西尾が1人で定点カメラを回して、俺らは朝と夜にデータを抜きに行ってそのまま編集をやるみたいな感じで、今でこそオフライン担当がいたり、音効担当は飯野だったりと分業制ですけど、当時はその日の担当者が全部やるスタイルでしたね。まぁ、途中から毎日投稿のシステムが崩れて、撮影集中になりましたけど。
飯野:そうだね(笑)なんか、ちょっと限界を迎えて撮影を手伝ったりしてた気がします。
-分業制に変わったのはいつ頃ですか?
飯野:須藤の心霊かな。
土井谷:うん。元々はYouTuber的な感じでやってました。 その日の編集はその人が全部やる、みたいな。それが段々、各々なんか得意なことをやっていくようになり始めて、その辺りくらいから飯野がカラーグレーディングやり出したりとか。
飯野:そうね、音やったりとか。本当にここで、思いっきし分業になったかな。西尾も、なんか館内図とか作ってた気がします。
飯野:あと、テロップは西尾が無人島からの脱出でフォーマットを作ってくれたんですよ、初めて。水ダウのパクリみたいなやつ。
-土井谷さんも、この辺りでオフラインを担当するようになったんですか?
土井谷:そうですね。須藤の心霊くらいからオフライン担当みたいになりました。その前までは、編集って抜きと、オフラインと呼ばれるものがあるんですけど、昔俺らはその間に2次カットと呼んでたものを挟んでいて、それをやってました。
-底辺時代を経て心霊を当てたわけですが、当時の心境はいかがでしたか?
土井谷:いやぁ、言葉では言い表せないくらい。
飯野:そうね。絶頂だね、人生の(笑)
土井谷:チャンネルの登録者数がすぐ反映される”YTカウンター”というのがあって、それまでは1カ月で10人増えるとか、100人増えたらすごいみたいな状態だったときに、1話目を上げた段階でそのアプリを見たら、10とかしか増えなかった値が見るたびに1000ずつ増えてて。
飯野:しかもあの数字がダイヤル式で、リアルタイムで上がっていくんですよ。それがね、いやぁ、マジでギャンブルで大当たりしたときみたいな。
土井谷:投資やってる人の感覚ですね。
飯野:あれ、マジで気持ちよかったな。
-これを機に、グループは『1週間シリーズ』を始めとする、大型企画がメインのスタイルへと変革を遂げました。世間一般のYouTuber像から逸脱し、未開拓の航路を進んでいくことに対する恐怖心みたいなのはありましたか?
飯野:ないでしょう。全盛期やで(笑)
土井谷:1本当たりの単価とかも、すごかったんですよ。それまでバイト代くらいしか貰ったことがなかった、バイト代くらいの金しか見たことなかったので。それこそ逃亡生活とかが、この月1本しか上がってないという月でも、結構な額が入ってきました。
飯野:そうだ。なんか見たことのない額が入ってきてて、これはもう売れたわってなったけど、そんなに甘くなかったですね。
土井谷:あと、シンプルに編集が終わらなかったというのもあります。大丈夫かなというよりかは、もう終わらないしなという感覚だったので、恐怖心はなかったです。
-この時期において、思い出に残っている作品とかありますか?
土井谷:これは被りそうだけど、やっぱりアメリカ逃亡です。
飯野:そうだね、アメリカ一択。
飯野:最高のホームビデオなんだよな、あれ。あの歳で友達と、ほぼアメリカ縦断みたいなことができたというのは、正直作品云々より、もう思い出として最高のものになっちゃってますね。
土井谷:あと編集も含めてですけど、なんかこんなのやりたいなとか、こんなふうになったら良いなが、割とできるようになってきたタイミングでもあるので、スキルがどんどん出せるし、規模も大きくなって、それこそコメント欄とかもすごいことになっていて。
飯野:そうだね。この頃はプレミア公開の人数もすごかったし。
土井谷:それも含めてやっぱり思い出します。明け方のハイウェイや荒野とか、デスバレーも、あの深夜の景色は一生忘れないだろうなくらいすごかったこととか、本当に言い表せない感覚です。
飯野:俺も、全く一緒になっちゃうな。ちょっと、アメリカ逃亡は別格なんです。
クリエイターとして評価を高めたのとは裏腹に、漂った停滞感-
樹海村で70万人台を射程に捉え、洗練されてきた企画力と編集力が日の目を浴び始めただいにぐるーぷ。そんな彼らを待ち受けていたのは、“金の盾”へのヴィクトリーロード…かと思いきや、クリエイターとしての拘りと、頭打ちとなった登録者数とのギャップに苦悩する日々だった。とくに、編集という観点においては、グループ最高傑作と自他ともに称される『1週間無人島バトルロワイヤル』で思い描いた成果を挙げられず、以降は停滞感が漂った。
-この辺りは、これまでの勢いが衰え始めた時期ですよね。
土井谷:この時期は、しんどかったです。
飯野:まぁ、全盛期が終わって(笑)耐えの時期が始まりましたからね。
土井谷:樹海村とかもですけど、クオリティを突き詰めれば突き詰めるほど、良い結果に繋がるみたいな感覚だったのが、それこそバトロワくらいからか、なんかどんだけ良くなっても現状が変わらなくて。
飯野:なんなら、ちょっと飽きられちゃうみたいな。
土井谷:いつ売れるんだよ、っていう雰囲気になっていました。
飯野:でも、編集で言ったら頂点の位置にまできた時期だったんじゃないかなと思います。
土井谷:時間もかけられたしね。
飯野:そうだね。全然動画が上がってなかったし、バトロワとか月1くらいじゃなかったけ?
土井谷:本当、ルームランナーを走ってるみたいでしたよ。
飯野:苦しかったよな、マジで。
-苦悩する日々が続いたわけですね。そうした状況を打開する出来事とか、転機みたいなことはありましたか?
土井谷:それで言うと、饗庭さんとガッツリ一緒にやったのが夕張で、その後くらいに服部も入って、徐々にいろんな人が関わるようになってきたので、転換期っぽさはありました。
飯野:ただ、グループ全体として進んでいる感じはなかったです。
土井谷:そうね。もう船がやばそうだったのに、乗組員がどんどん増えてきたみたいな。
飯野:多分、一番苦しい時期だったよね。
土井谷:だからそういうのもあって、俺は夕張がこの時期だと思い出に残っています。
飯野:俺は、PEDROかな。服部が確かガッツリ入ってくれて、テロップとかすごく綺麗になった時期だと思うので、割とクオリティももう一段階上がったみたいな感じ。
-PEDROのアユニ・Dさんは、その年の紅白歌合戦にも出演された人気アーティストです。そういう意味でも、YouTubeの枠を大きく超えたコラボだったように思います。
土井谷:確かに、これで世間に届く可能性はあるな、とちょっと思ってたかもしれないです。
飯野:楽しみだったかもね。初めてだったし、どういうリアクションが返ってくるんだろうってのもありました。あと、あそこまで視聴者参加型の座組も初めてだったので、撮影自体も面白かったです。
土井谷:アユニの勢いもすごくて、こんなに集まるのかっていうくらい人がエグかったのを覚えています。僕らはそこまで集められていなかったような気がしますが、なんか世の中心にいる感はありました。
飯野:あと、バトロワの編集はやっぱり、一番印象に残っていますね。
土井谷:あれは、マジで超えた人いないんじゃないですか、YouTubeで。
飯野:part1の編集は、結構みんなでやってたんですけどね。part2くらいから俺と西尾の2人だけでやるみたいな、なんでそんなことになったかは覚えてないけど、どんでもないことをやってました。
土井谷:ゴーストタウン生活のスケジュールが迫ってきてて、夏に上げなきゃいけないということで撮りに行ったからだね。
飯野:そうだ。みんなが撮影に行ってるときに、西尾と編集していました。
土井谷:そんな2人には申し訳ないですけど、僕はやっぱり夕張です。
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後編へ続く…
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